土佐打ち刃物400年の伝統を守る、匠の業と若者の熱意。

次世代に伝えたい、この美しさ、この切れ味。

「カン、カン、カン」と、外まで鳴り響く鉄と鉄がぶつかる音。 「熱中症で倒れたこともあったので、『水飲んだ?』って何度も声掛けてるんですけど…」 そんな奥様の心配をよそに、岡田打刃物製作所のご主人・岡田俊章さんは、汗にまみれながら一心不乱に鉄の棒を打ち付けています。

岡田打刃物製作所は、土佐の伝統工芸「土佐打刃物」を手掛ける製作所。 主の岡田さんは昭和25年生まれ、この道48年の鍛冶職人。平成24年には、経済産業大臣指定伝統工芸品 「土佐打刃物・総合部門」の「伝統工芸士」の認定も受けています。

お話を伺う際、岡田さんの手に目が行きました。分厚くでこぼことした皮膚の上には怒張した太い血管が常に脈打っており、 歩んできた道のりの凄絶さを物語っているようでした。

「今も毎日、『ここがいかん』『ここがいかん』思いながらやっとる」 約半世紀に渡り鍛冶職人を続けてもなお、そう語る岡田さんはまさに求道者といった趣。 そんな岡田さんですが、一つだけ後悔があるといいます。それは跡取りを作らなかったこと。 これまでに弟子入り志願者が何人か来たものの、最大800℃にまで達する焼入れ釜の前に立つと、 皆すぐに根を上げて辞めてしまうのだとか。「長男が今からやる言うてるけど、もう40歳で年やきね~」と苦笑。

この岡田刃物製作所と連携して刃物の「刃付け」を行っているのが、明神利器製作所です。 8名の従業員の中には若い方がたくさん見受けられます。

所長で、高知県随一の技量と言われる刃付師の明神健雄さん。岡田さんと同じ昭和25年生まれの68歳です。 「やっぱり若いもん連れてやると、問屋さんから依頼が来やすくなる」 このように語った明神さん。将来性のある若い世代が製作所にいることで、各取引先と長期的なお付き合いが可能となり、 結果、製作所は栄え、土佐打刃物の伝統を継承することに繋がるというのです。

その「若いもん」の代表として明神利器製作所を引っ張るのが、明神直人さんです。 現在29歳。幼い頃から家業の大変さを知っていた直人さんは、父・健雄さんの元で働く気があまり起きなかったといいます。 刃付師としてのやりがいに目覚めたのは、「両刃研ぎ」の修行のため、3年間福井県の製作所で働いた時だそう。 この時に喜んでくれるお客さんの顔を見て仕事が楽しくなり、家業への意欲が沸いてきたのだそう。

紆余曲折あっただけに、直人さんの伝統工芸に対する想いは強い。 「発信せんとわからないと思うんですよ。『若い人が伝統を受け継いでやってます』っていうことを知ってもらうための活動を、 もっとしていくべきだと考えています」 熟練の匠から手渡される技術と若い職人さんの熱意が、高知県に400年根付く土佐打刃物の技能を次世代に残す大きな原動力となるのは間違いありません。

土佐打ち刃物400年の伝統を守る、匠の業と若者の熱意。No.392065-03-0003

岡田打刃物製作所
住所:〒785-0046 高知県須崎市桑田山甲276
TEL: 0889-45-0012
明神利器製作所
住所:〒785-0162 高知県須崎市浦ノ内東分2193-1
TEL:0889-49-0746

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