からくり人形が語り継ぐ、岩倉の祭り。

山車の宝庫、尾張地方でも最古の歴史を誇る3台

祭りの日の神様の乗り物として、迫力のある姿で人々を高揚させる山車。実は東海地方、なかでも尾張地方は、全国的に見ても多くの山車が受け継がれている地域だといわれています。現存する山車の多くは江戸時代に作られたとされ、彫刻や幕などの装飾品も見ごたえ十分。二層構造で車輪が木の柵で覆われた「名古屋型」、三層構造で堂々と背の高い「犬山型」など、町ごとに特徴のある山車が伝統的な祭りの風景を彩ります。

そんな尾張の山車の中でも、最古の部類とされるのが岩倉の山車。大上市場(新溝神社)、中本町(神明大一社)、下本町(神明生田神社)と3台ある山車のうち、最も古い下本町の山車は、歴史的な資料の記述から1625年の制作とされています。三層構造のつくりは犬山型に似ていますが、輪懸(わがけ)と呼ばれる車輪の覆いがあるところは名古屋型に近い形。「犬山型が成立したのは岩倉より後ですし、名古屋型は古いものでも作られて200年弱。ひょっとすると岩倉のものが両者の源流なのかも?」と下本町区山車保存会の故小島康夫さんは語りました。

直径1m近くある車輪は、昔は1本の大木を輪切りにして4つの車輪を取ったとか。過去に取り換えて保存してある下本町山車の車輪を見ると、一代前の車輪には「明治35年」、さらに前のものには「元禄」の文字が残っていて、その歴史の厚みを実感させてくれます。

また、この地方の山車の大きな特徴といえばからくり人形。唐子と呼ばれる子供の人形がもう一人の唐子の上で逆立ちをして太鼓をつつく『肩上倒立』(大上市場)、馬上から武士が矢を射ると、的の扇が社に代わる『那須与一』(中本町)、菅原道真と巫女が登場し、道真が梅の枝を切るエピソードを演じる『菅丞相』(下本町)など、それぞれに異なる人形が、最上層で見事な演技を披露します。第二層には「難を払う」動きをする『ざいふり』という人形が鎮座。もともと厄ばらいの祭りである『岩倉祇園祭』で、おはらいのために町内を回っていた山車ならではといえるでしょう。

これらの山車は以前は各神社の持ち物でしたが、今はそれぞれの地区の保存会に移管。漆の塗り直しだけでも1000万円以上かかるほど貴重な、ある種の工芸品でもあることから、各保存会の積立金と岩倉市の補助金で大切に維持されています。三階建て相当の巨大な車庫には、一定の温度になると作動する空調がついていて、温度や湿度もしっかり管理。『桜まつり』などの出番に向けて万全の態勢を整えています。

春は五条川の桜が咲き誇る中、岩倉の特徴である道幅の狭い街道を、お囃子の音色に彩られながら3台の山車がゆく光景は、17世紀の昔にタイムスリップしたような思いに見る人を引き込むことでしょう。

岩倉山車保全プロジェクトNo.232289-01-0001

昭和30年代の中頃より長らく、岩倉山車の姿が見られない時期が続きました。 その後、平成3年の岩倉市制20周年を契機として復活し、翌年には岩倉街道で3台の山車の揃い曳きが実現しました。現在では、春の『桜まつり』に3台の山車の揃い曳きが行なわれています。再起を果たした岩倉市指定の有形文化財を守っていく為のご支援を、宜しくお願い致します。

※このプロジェクトは、寄附の使い道を「【特別プロジェクト】伝統の山車文化守ろうプロジェクト」として受付させていただきます。

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