新春の到来を祝う母娘が主役の華やかな祭事
三崎の花暮、仲崎地区に伝わる小正月(1月15日)の伝統行事・チャッキラコ。演者が女性だけであるのが特徴で、主役は4・5歳〜12歳(小学6年生まで)の少女たちです。まだあどけない表情の少女たちが晴れ着をまとい、可憐に舞い踊る姿は、新年の幕開けにふさわしい繊細さと華やぎに満ちており、2009年9月にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
起源に定説はありませんが、海南神社の祭神である藤原資盈の奥方である盈渡姫が村の娘に踊りを教えたという説が伝わっています。また、三浦の風光明媚な風景を愛し、たびたび来遊していたという源頼朝が、浜辺で海藻を獲っていた母娘に舞を所望したところ、母親が「娘に踊らせましょう」とその場にあった竹を切って綾竹に加工し、母の唄にあわせて娘が舞ったという説もあります。いずれにしても、江戸時代の書物にすでにこの行事について記されていることから、少なくとも250年以上前から伝承されてきたものだと考えられています。
曲目は「はついせ・初瀬」「チャッキラコ」「二本踊り」「よささ節」「鎌倉節」「お伊勢参り」の6曲で、踊りのベースになっているのは「音頭取り」と呼ばれる50代〜70代の女性たちによる素唄のみ。楽器などは一切使いません。
「母と娘が一緒になって、しかも女性だけで行うという祭事は全国的に見ても非常に珍しいと言われています。地域の子どもたちの人数は減少していますが、かつて踊り手だった女性が母になり娘を連れて参加したり、今度は唄い手として自身が参加するという流れもあります。素朴な行事ではありますが、だからこそ地域の財産として大切に守っていきたいですね」と話してくれたのはチャッキラコ保存会会長の高木巌さん。
新たな年の始まりを、伝統の歌と踊りで飾り、祝う。
小さな港町で、母から娘へ、娘から孫へと代々伝えられてきたこの美しき行事が、いつまでも続くことを祈ってやみません。