「小ナイアガラ」ともいわれる景観は「日本の滝100選」にも選定

あぶくま高原道路の玉川インターチェンジから国道118号線を北に進んだ阿武隈川沿いに、乙字ヶ滝はあります。その名の由来は、その形が“乙”に見えることから、乙字ヶ滝と言われるようになったといわれています。「増水時の流れの形が“乙”だから」という説と「側面から見た断層の形が“乙”だから」という二つの説があります。

滝を見られるポイントは整備された遊歩道になっており、木々の間を抜けて奥に進んで行けば、滝の流れる音とともに高台から滝の全貌を見ることができます。乙字ヶ滝の落差は約6m、特徴的なのはその横幅で、水流によって変化しますが、大きいときは約100mに達することもあり、その壮大な景観から「小ナイアガラ」とも呼ばれることがあるほど。福島県内でも名瀑として知られ、「日本の滝100選」にも選定されています。また、水源付近を除けば阿武隈川唯一の滝となっており、遊歩道から河原まで降りることもできるので、より近くで流れ落ちる白い水流を楽しむことができると人気の観光スポットとなっています。

 

松尾芭蕉も訪れた歴史を体感できるスポット

松尾芭蕉は代表作「奥の細道」を著す旅で、同行する門人の河合曾良とともに元禄2年(1689年)、この地を訪れています。現在の暦にすると6月頃、梅雨に入る季節であったため阿武隈川は大雨により増水しており、その様子を見た芭蕉は「五月雨の滝降りうづむ水かさ哉」と大量に流れ落ちる乙字ヶ滝の水流を句にしています。この句は句碑として遊歩道内で見ることができます。また、芭蕉と曾良の石像もありますので、滝の音を聞きながら、当時を思い散策してみるのもよいかもしれません。

 

 

また、同じく遊歩道内で、滝がよく見える場所に「瀧見不動堂」というお堂があります。開基は大同3年(808年)、空海(弘法大師)によるものとされています。本尊の不動明王像も空海作との説もありますが、公式には製作年代、作者ともに不詳とされています。代々の白河藩主も参詣した歴史的なお堂も、乙字ヶ滝とともに一見の価値があります。

 

乙字ケ滝から玉川村の「新 奥の細道」スポットを巡る

このほかにも、玉川村には自然や歴史を楽しめるスポットが多くあります。東北6県をまたぐ「新 奥の細道」の「乙字ヶ滝と歴史を訪ねるみち」コースでは、乙字ケ滝などを含む観光スポットを散策しながら、歴史に思いを馳せ楽 しむことができます。

 

コース内にある「五輪塔」は昭和13年に重要文化財に指定された藤原時代建立の石塔婆で、歴史的にも造形的にも非常に価値の高いものとされています。

 

乙字ヶ滝周辺は春に桜を楽しめる場所でもあり、たくさんの人が訪れます。そして、多くの史跡、壮大な自然の景観を堪能できる貴重なスポットです。芭蕉も訪れたこの地に、ぜひ一度足を運んでみませんか。

小ナイアガラの滝”の別名を持つ『乙字ヶ滝(おつじがたき)』No.075027-03-0002

乙字ヶ滝
住所:福島県須賀川市前田川深田
URL:玉川村 産業振興課 商工観光係(外部サイト)

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